RCCNEWS

P
R

記者たちのまなざし 広島 コロナ禍で奮闘 体操のおにいさん 動画で苦境訴える

2021.7.21 17:28
 RCCの記者・ディレクター・カメラマンが、「広島を生きる人」に注目しました。きょうからシリーズでお伝えする『記者たちのまなざし』です。コロナ禍の苦しい思いを、動画で訴えていた男性…。家族のためにがんばる「体操のおにいさん」を、岡茂幸男カメラマンが取材しました。

 「みなさん、こんばんは、巧です。助けてください。」(YouTube「TAKUKIN」より)

 わたしが、ユーチューブでこの動画を見たのは、去年4月のことでした。

 「自分でどうにかせんといけんけど、外にも出られない。家族も守らないといけない。飯も食っていかんといけん。どうすりゃいいんという話で。」(YouTube「TAKUKIN」より)

 広島弁で不安を訴える男性に話を聞こうと、自宅を訪ねました。悲痛な声をあげていた梶本巧さん(28)です。

 「混乱していた気持ちを思い出しますね。(動画を見た)いろんな方から励ましの言葉とか動画、一緒に撮りましょうとかでちょっと光が見えたような気はしましたね、当時。」(梶本巧さん)

 巧さんの仕事は、出張サービスに特化したフィットネスクラブの代表で、インストラクターです。個人の家に出向いて、マンツーマンで行うパーソナルトレーニング、公民館や集会所などを利用してグループで取り組む体操教室を開いています。

 しかし、全国に緊急事態宣言が出された去年4月、施設を使うことができなくなりました。宣言解除の後も、すぐには人は集まらず、仕事の収入はゼロに…。

 2年前に結婚した妻・小夏さん(24)と、先月に生まれた剛拳くん。巧さんは、家族の生活も守らなければいけませんが、感染の終息は見えず、家計を揺るがしています。

 「ふつうに会社で働いたらとか思ったりはしたんですけど、やっぱり今の仕事をしているときが一番生き生きしているし、楽しそうだし、わたしも楽しいし、天職なんじゃないかなと思うので応援しています。」(妻・小夏さん)

 巧さんは、6歳のときに体操を始めました。高校生のときは鹿児島県代表で国体に出場。大学でも活躍しました。実業団での競技生活を目指していましたが、アキレス腱断裂の大けがをして、断念しました。

 「やっぱり体操を教えたいなというか、体を動かすことを人に教えたいなと思いだして。」(梶本巧さん)

 一度は一般企業に就職したものの、体操を生かした仕事がしたいとサラリーマン生活を辞めて、4年前にフィットネスクラブを立ち上げました。

 この日は、家電や日用品を取り扱っているネット通販会社でのグループレッスンです。従業員だけでなく、家族や地域の人も参加できます。

 「『ガチダイエット』っていう名前にしてるんですけど…。」(梶本巧さん)

 その名前のとおり本気でやせたい人が集まっています。きょうの狙いはお腹まわり…。体幹を鍛えて、腸の動きをよくし、体重が減りやすい体質にするのが目的です。

 「上半身、がんばらないといけないんで、下半身よりも上半身を上げてくる意識で、ここを鍛えて、足が上がってくる力で下腹を。」(梶本巧さん)

 参加者は、巧さんの考えたトレーニングメニューを「やせたい…」の一心で必死にこなしていきます。

 「(体を)動かす仕事からデスクワークに変って体重6キロ増えたんですよ。これから海のシーズンくるので、見せられる体になりたいなという目標でがんばっています。」

 「運動を始めたら(体重が)落ちてきて5キロほど。もう、これ(ガチダイエット)1本でやっています。」(参加者たち)

 「同じプログラムでも、人によって負荷のかけ方がちょうどよくできるというのを先生が考えられているのが、すごいなと思います」(ベストワン 徳本真次社長)

 「へとへとになっていたら、みんなが、ああやったなと思います。」(梶本巧さん)

 「きょうは、これで終わりにしたいと思います。お疲れさまでした。」

 出張サービスに特化したフィットネスクラブ。巧さんは、なぜ、この仕事を始めたのでしょうか。

 「主婦の方とかで車を持っていないとか、遠出できないという方のために、自分が地域密着で近くまで行ってあげればやってもらえるんじゃないかなっていう思いもありましたね。」(梶本巧さん)

 「これから体操教室を始めます。」

 巧さんが、3年前から開いているキッズ体操教室です。現在、年少から小学校5年生が通っています。

 感染防止のため、子どもたちが運動する場所や機会は制限されています。巧さんは、鉄棒や逆立ち、側転など、体操の基本を教えています。

 「体操をやっておけば、自分の体の使い方がすごくわかるので、体を動かすことの楽しさと体の操り方を知ってもらって、いろんなスポーツに生かしてもらえればいいなと思っていますね。」(梶本巧さん)

 「逆上がりができるようになりました。」

  「近くで(体操教室を)やってくれているので、送り迎えも楽だし、兄妹で通わせられるので、とてもいいと思います。側転、まったくできなかったんですけど、だいぶできるようになって、それが楽しくて毎日、家でも練習しよるよね。」(参加者の保護者たち)

 これから先も感染が再び拡大して仕事ができなくなるかもしれません。

 「いろんなスポーツで、例えばオリンピック選手が出たときに、巧先生の所で体の使い方を教えてもらったから、ここまで来れましたみたいなことになればいいな。」(梶本巧さん)

 巧さんは、体操の楽しさを誰よりも知っています。人に伝える力も人一倍あると、わたしは感じました。体操のおにいさんは、きょうもあなたの街に車を走らせています。

 取材・岡茂幸男カメラマン
  • twitter
  • Facebook
  • LINE

PAGE TOP